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  第五話 恩師 後藤新太郎!


俺の後輩の段付きのフロアパンを千葉県木更津市の車屋から
大阪府堺市の車屋まで10t車でチャーターする為、現場に立会った。

ガレージゴトウという店(木更津)は古いロメオに強い車屋という認識
しか持っておらず、行った事もなかったし、当時東京に住んでいた俺は、
ジュニアで都内から木更津まで走る事も楽しみにしていた。

朝6時にスタートし、ご機嫌なペースで走っていると、だんだん右足が
床から離れなくなり、気が付くと7時過ぎには木更津に着いていた。
(そういえば当時はアクアラインがなかったっけ!笑)

住所を元に地図をみながら、

「何処やねん!ほんまにこの辺なんかいな!」

10分位うろうろした頃だった。
空き地に無造作に捨てられ、上下に重ね合わさっているロメオやランチャ、
ボディやタイヤがない車の残骸が目にうつった。(俺にとってはヨダレモノ!)

当時は門が無い空き地だったので、すぐさま俺は侵入し、

「このベルリーナぼろぼろやけど、俺の車のテールレンズに使えるやん!
あっ!この車、ボディがないから何かわからんけど、
伊藤忠時代のオプションのカンパニョーロやん!すごいやん、ここ!」

1時間ほど勝手に物色したころ、空き地から道路を隔てて反対側の
工場のシャッターが開いた。

「おはようございます。フロアパンの積み込みの立会いに来ました。」

「あっ!・・・・・君のね!それだよ!」

「ジュニアZ乗ってるの?調子どう?」

「アイドリングがバラつく時があるんですけど!」

「エンジンかけてみて!」

すぐさまポケットからドライバーを出し、治してくれた。

とてもやさしい口調でしゃべり、見るからに温厚な人だ。
(後に知ったが、サーキットや修理後のテストドライブでは別人になる)

色々な物を見せてもらったり、話を聞かせてもらううちに
いつの間にか外が暗くなってきた。

旋盤を回す音、バルブを削る音、キャブレターが元気に空気を吸う音、
触媒のないマフラーから出てくる何とも言えない排気ガスの匂い、

全てが五感を麻痺させ、俺を中毒にさせた。

帰りたくない!もっとここにいたい。もっとここの空気を吸っていたい!
誰か助けてー!

それからというもの、頻繁に通いつめた。

そんなある週末の夜、

「菅井君!顔色悪いけど、ちゃんとメシ食ってる?」

「俺のメシ代、コイツが食っちゃうんで!」
(その時の俺は一日二食だったが何故か痩せなかった。)

「どうせろくなモン食ってないんだろ?
 
これでノリオと晩飯でも食ってきなさい。!」
(ノリオ君とは当時の後藤さんの片腕の若いメカニック)

世の中にはこんな人がいるんだ。俺は涙が出てきた。

俺とノリオ君は近くの居酒屋でこれでもかーというほど
飲み食いさせてもらった。

色々なロメオの店に行ったが、俺が若い時(20代前半)、
ジュニアZを見せずに店を訪れると、鼻で扱われるのが
ほとんどだった。

ある店は、1回目訪れた時、

「うちは一元さんは見ないから!」

と言われたのに、2回目ジュニアZで行くと、
手のひらを返した様に態度が変わる。

「なめとんかボケッ!!」

いくら有名なお店でもこっちがゴメンである。

お金がないのに身分不相応でロメオに乗っているのが
そもそもの間違いだと気づいていたが乗りたいねんから
しゃーないヤン。(笑)

後で知った事だが、後藤さんも若い時、初めて乗った
ロメオが2600スプリントだったそうで、相当苦労したそうだ。

だから当時の俺の気持ちがよくわかったらしい。

それからというもの、家族ぐるみの付合いがはじまった。

数年の月日が経ち、俺も職場が神戸に移ったある時、
後藤ファミリーが用事で神戸に来るという連絡があった。

仕事が終わってから家族同士で久しぶりにメシを食った。

娘さんもいっしょだったので、六甲山の夜景を見せるため、
再度山に登り、絶景のポイントで車を止めて景色を眺めた。

ちょうどその時、

「ギャギャギャギャギャボーーーーーキキーボーーーー」

と走り屋が山から10数台降りて来、目の前でUターンし、
ハザードをつけ、一列に並んだ。

後藤さんは夜景どころではなくなった。

「オー!オー!オー!」

「あのシビック!ロールケージ入ってるよ!」

「あのハチロク!Uターンの時、ゴキゴキ聞こえたから
 ノンスリのロッキングファクターは70%位かな!」

「あのCRX!排気音からして相当やってるな!」

もちろん娘さんはほったらかし状態。

10数台がテールツウノウズでハザードをつけたまま、
一斉にホイールスピンをして1コーナー、2コーナーを
ドリフトで消えていく。(そこまでしか見えない。)

「オーーーーーーーッ!オーーーーーーーッ!」

その時の後藤さんの目がもっと見たいと俺には伝わった。

俺はもっとよいポジションに車で移動した。
(過去に俺もこのコースをキャブのカローラに乗って
 よく走っていたので場所はよく把握していた)

その時の後藤さんがわすれられない。

(このオヤジすごいわ!ほんまに好きやねんな!)
(当時多分40代後半)





5・6年前のTIサーキットで行われたチャオイタリアのパドックで、
後藤さんのエントリーしているマシンをノリオ君と二人で
トーインやキャンバーを険しい表情で秒刻みで直している
のを見た時、フェラーリのF1のパドックに見えた。

当時の最終コーナーの脱出スピードが、他のマシンより
早いのが肉眼ではっきりわかったのを覚えている。

俺もこんな年のとりかたがしたい。

今のスターリング・モス や ジョン・ローズ(大好き!)のように、
ジジイになってもかっとんでほしいものである。




奥野さんと出会うまでは、自走出来れば
千葉県まで修理に持ちこんでいた。

俺は人生において人間関係や出会いに重きを置く。
仕事であろうが、プライベートであろうが、「この人!」
と思った人には本当に自分をさらけ出す。

言いかたを変えれば、だまされてもえーわ!しゃーないわ!
と思っている。

SCUDERIA VERDY と GARAGE GOTO、
俺はそんな付き合いかたをしているのだ。

(相手は思っていなかったりして!)


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